ベトナム人の名前の仕組み|姓・間の字・名の順番とどこを呼ぶか
ベトナム人女性と交際が始まると、まず戸惑うのが名前です。3つも4つも単語が並んでいて、どこが苗字でどこを呼べばよいのか分かりません。
本記事では、ベトナム人の名前がどういう仕組みでできているのかを、順番・呼び方・表記の3点から整理します。あわせて、書類上の名前と普段名乗っている名前が食い違うことがある理由にも触れます。
名前は毎日使うものです。仕組みを一度理解しておくと、彼女の家族と話すときにも書類を書くときにも迷わなくなります。
ベトナム人の名前は姓・間の字・名の3つでできている
ベトナム人の名前は、姓(Họ)と名(Tên riêng)で構成され、名はさらに間の字(chữ đệm)と本名(tên chính)に分かれます。日本と同じく姓が先に来るため、順番そのものは日本人になじみやすい形です。
3つの要素を例で確認する
たとえば「Nguyễn Thị Hương(グエン ティ フーン)」という名前は、次のように分解できます。
| 位置 | ベトナム語 | 例 | 役割 |
|---|---|---|---|
| 1番目 | Họ(ホ) | Nguyễn | 姓。父または母から受け継ぐ |
| 2番目 | chữ đệm(チュ デム) | Thị | 間の字。必須ではない |
| 3番目 | tên chính(テン チン) | Hương | 本名。呼びかけに使う |
ベトナム民法2015年第26条第1項は、個人が姓と名(間の字を含む場合はそれも)を持つ権利を定めています。間の字は法律上も「ある場合」と書かれており、必ずしも全員が持つものではありません。
全体の長さは2音節から4音節
名前全体の長さは2音節から4音節で、最も多いのは3音節です。「Lê Lợi(レ ロイ)」のように間の字を持たない2音節の名前もあれば、「Nguyễn Thị Minh Khai(グエン ティ ミン カイ)」のように4音節の名前もあります。
単語の数が人によって違うため、数だけを見て姓や名を判断することはできません。必ず先頭が姓、末尾が本名という位置で見てください。
姓が同じでも親戚とは限らない
ベトナムでは、少数の姓に人口が集中しています。2022年の統計では、Nguyễn(グエン)だけで人口の約31.5%を占め、上位16姓で7割以上に達するとされます。
歴史上、王朝から姓を与えられたり、政治的な事情で姓を変えたりした例が多いため、姓が同じでも血縁関係があるとは限りません。姓の由来についてはベトナム人に多い苗字はなに?で解説しています。
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呼びかけに使うのは最後の名
ベトナムでは、呼びかけに使うのは名前の最後にある本名で、姓や間の字では呼びません。日本人が最も間違えやすいのがここです。姓で呼ぼうとすると、相手は自分のことだと気づきません。
「Nguyễn Thị Hương」さんは「Hương」さん
先ほどの例であれば、呼びかけるのは「Hương(フーン)」です。「Nguyễn さん」でも「Thị さん」でもありません。
ベトナムでは同じ姓の人が非常に多いため、姓で呼んでも相手を特定できないという事情もあります。
なぜ最後の名で呼ぶようになったのか
かつてのベトナムでは、中国や朝鮮、日本と同じように姓で呼ぶのが丁寧とされ、名で呼ぶのは家族や親しい間柄に限られていました。
この習慣が変わったのはフランス統治期です。フランス語圏の呼び方の影響を受け、最後の名で呼ぶ形が一般化しました。今日では、初対面でも本名で呼ぶのが普通です。
改まった場面ではフルネームを使う
日常では本名だけで呼びますが、改まった場面ではフルネームを使います。政治家や有名人を紹介するときにフルネームで呼ぶのは、そのためです。
本名だけで呼ぶと素っ気ない響きになる場面があり、そのときは姓と本名を組み合わせたり、間の字を含めて2音節で呼んだりします。
呼びかけの言葉は年齢と関係で変わる
ベトナム語では、名前の前に相手との関係を表す言葉を付けます。年上の男性なら anh(アイン)、年上の女性なら chị(チ)、年下なら em(エム)です。
日本語の「さん」のように誰にでも使える言葉がないため、相手の年齢を早い段階で確認します。言葉の壁との付き合い方は国際結婚の言葉の壁はどう越えるかにまとめています。
間の字はミドルネームではない
間の字は姓と本名のあいだに置かれますが、西洋のミドルネームとは位置づけも働きも異なります。書類の「ミドルネーム」欄にどう書くかで迷う場面があるため、性質を知っておくと役に立ちます。
間の字が果たしている役割
間の字には、主に次のような働きがあります。
- 性別を示す
- 母方の姓を示す
- 家系の分かれを示す
- 語呂を整え、響きを柔らかくする
たとえば「Trần Lê Quốc Toàn」という名前の場合、姓は「Trần Lê」という複姓ではありません。父から受け継いだ姓が Trần で、母の姓である Lê が間の字として入っています。
複姓は数が少ない
ベトナムの姓は大半が単音節です。Tôn Thất(トン タット)、Hoàng Phủ(ホアン フー)、Âu Dương(オウ ズオン)のような複姓も存在しますが、数は多くありません。
そのため、2音節目を見て複姓か間の字かを判断するのは難しく、本人に確認するのが確実です。
書類での扱いは窓口に従う
日本の書類でミドルネーム欄がある場合、間の字をそこに書くのか、名の一部として書くのかは書類によって扱いが変わります。自己判断で分けず、パスポートや在留カードの表記のとおりに書くのが安全です。
女性に多い「Thị」を外す人が増えている
かつて女性の間の字として最も一般的だった「Thị」は、現代では好まれなくなり、外したり別の字に替えたりする人が増えています。彼女の書類上の名前と、普段名乗っている名前が違う場合、この事情が背景にあることがあります。
かつての定番だった間の字
以前は、男性の間の字として Văn(文)や Hữu(有)、女性の間の字として Thị(氏)が最も一般的でした。年配の世代ほど、この形の名前が多くなります。
敬遠されるようになった3つの理由
ベトナム語の資料では、Thị が好まれなくなった理由として次の点が挙げられています。
- Thị(氏)はもともと氏族を意味する語で、本名の意味を補う働きを持たない
- 「侍」と同じ音であり、仕える立場という含みを連想させる
- 他の間の字であれば「Nguyễn Ngọc Hoa」を「Ngọc Hoa」と呼べるが、「Nguyễn Thị Hoa」を「Thị Hoa」と呼ぶのは失礼にあたるとされる
実際に外している例
芸能分野では、Hồ Thị Ngọc Hà が「Hồ Ngọc Hà」として活動し、Tăng Thị Thanh Hà が「Tăng Thanh Hà」として活動しています。Phạm Thị Thảo のように、Thị を別の字に替えて「Phạm Phương Thảo」と名乗る例もあります。
日本側で気をつけたいこと
彼女がSNSや自己紹介で使っている名前と、パスポートや在留カードの名前が一致しないことがあります。手続きの書類では、必ず公的な書類の表記に合わせてください。
普段の呼び方は彼女が名乗っている形を尊重し、書類は公的表記に合わせる、と使い分けるのが実務的です。呼び方や書類の表記で迷っている方は、状況を伺ってお答えします。
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カタカナ表記と漢字との関係
ベトナム語の名前は声調記号を含むため、カタカナやローマ字に置き換えると表記が揺れます。日本での生活では、カタカナ表記をどう決めるかが実務上の課題になります。
声調記号は日本の書類では落ちる
ベトナム語には声調記号があり、Nguyễn の「ễ」のように文字の上下に記号が付きます。パスポートや在留カードでは記号のないローマ字で表記されるのが一般的です。
そのため、正式なベトナム語表記・パスポートのローマ字表記・日本語のカタカナ表記という3つの形が並存することになります。
カタカナ表記は一度決めたら統一する
同じ「Huyền」でも「フエン」「フイエン」「ホエン」と書き分けられてしまうことがあります。銀行、病院、保育園などで表記が揺れると、本人確認で手間が生じます。
来日後の早い段階で、家庭内で使うカタカナ表記を1つに決めて統一しておくと、後の手続きが楽になります。実務では、在留カードのローマ字表記をもとにカタカナを決める形が扱いやすくなります。
漢字で書ける名前もある
ベトナムでは、フランス統治期以前は漢字とチュノムで文字を書いていました。そのため、姓名の多くは漢字で表すことができます。Nguyễn は「阮」、Trần は「陳」、Lê は「黎」にあたります。
ただし、同じ音に複数の漢字が対応することがあり、当て方には幅があります。漢字の意味を断定するより、本人や家族に由来を聞くほうが確実です。
子どもの名前を考えるとき
日越の夫婦が子どもの名前を決めるときは、両国で呼びやすい音を選ぶことが実務的な出発点になります。考え方は国際結婚の子供の名前の考え方にまとめています。
結婚後の夫婦の姓についてはベトナム人と結婚したら苗字はどうなるかをご覧ください。
よく見かける名前と意味の考え方
ベトナム人の名前の多くは漢語に由来する語からできており、季節・花・宝石・美徳を表す語がよく使われます。彼女の名前の由来を知っておくと、家族との会話が広がります。
女性の名前によく使われる語
| ローマ字 | カタカナ | 一般に対応するとされる漢字 | 意味の系統 |
|---|---|---|---|
| Hương | フーン | 香 | 香り |
| Hoa | ホア | 花 | 花 |
| Mai | マイ | 梅 | 梅の花 |
| Ngọc | ゴック | 玉 | 宝石 |
| Linh | リン | 霊・鈴 | 霊妙さ、鈴 |
| Thanh | タイン | 清・青 | 清らかさ |
| Phương | フーン | 芳 | 芳しさ |
| Thu | トゥー | 秋 | 秋 |
| Anh | アイン | 英 | 優れていること |
| Minh | ミン | 明 | 明るさ、聡明さ |
同じ音に複数の漢字が対応することがあるため、この表は目安です。実際にどの字を当てているかは、家族に聞かないと分かりません。
名前は組み合わせで意味を持つ
ベトナムの名前は、間の字と本名を組み合わせて意味を作ることがあります。「Ngọc Hoa」であれば宝石と花、「Thanh Hương」であれば清らかな香りといった具合です。
日本の名前と同じく、親が子に込めた願いが表れています。由来を聞くと、彼女の家族の考え方が見えてきます。
男女で使われる語が違う
Hương、Hoa、Mai のように女性に多く使われる語がある一方、Hùng(フン/雄)、Dũng(ズン/勇)、Cường(クオン/強)のように男性に多い語もあります。
ただし Anh や Minh のように男女どちらにも使われる語があるため、名前だけで性別を判断することはできません。かつては間の字の Thị と Văn が性別の目印になっていましたが、Thị を使わない人が増えた現在は、その手がかりも弱くなっています。
彼女の名前の由来や呼び方について聞いてみたい方は、お気軽にご質問ください。
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よくある質問(FAQ)
ベトナム人の名前はどこが苗字ですか?
先頭が苗字です。「Nguyễn Thị Hương」であれば Nguyễn が苗字にあたります。
呼びかけるときはどこを呼びますか?
最後にある本名を呼びます。「Nguyễn Thị Hương」であれば「Hương」です。
間の字はミドルネームと同じですか?
位置は似ていますが、働きは異なります。性別を示したり母方の姓を示したりする要素で、西洋のミドルネームとは別の仕組みです。
「Thị」はどういう意味ですか?
もともと氏族を意味する語で、かつて女性の間の字として一般的でした。現代では敬遠され、外したり別の字に替えたりする人が増えています。
名前をカタカナでどう書けばよいですか?
決まった正解はありません。在留カードのローマ字表記をもとに家庭で1つに決め、書類全体で統一するのが実務的です。
ベトナム人の名前は漢字で書けますか?
多くは漢字で表せます。ただし同じ音に複数の漢字が対応することがあるため、由来は本人や家族に確認してください。
まとめ
ベトナム人の名前は、姓・間の字・本名の順に並びます。先頭が姓、末尾が本名で、呼びかけに使うのは末尾の本名です。姓では呼びません。
間の字は必須ではなく、西洋のミドルネームとも別の仕組みです。女性に多かった「Thị」は現代では敬遠され、外したり替えたりする人が増えています。書類上の名前と普段名乗る名前が違う場合は、この事情が背景にあることがあります。
日本での生活では、カタカナ表記を早い段階で1つに決めて統一しておくと、その後の手続きで困りません。
ベトナム人女性との関係づくり全般はベトナム国際結婚 完全ガイドにまとめています。
参考
- Bộ luật Dân sự 2015(ベトナム民法2015年)第26条 — 姓名を持つ権利
- Tên người Việt Nam(ベトナム語版ウィキペディア) https://vi.wikipedia.org/wiki/T%C3%AAn_ng%C6%B0%E1%BB%9Di_Vi%E1%BB%87t_Nam — 名前の構造、間の字、呼び方の変化
(本記事の内容は2026年8月時点の情報にもとづきます。名前の付け方や呼び方には地域差・世代差・家庭差があります)
Supervisor
この記事の監修者
安仲 圭大(アオザイブライダル代表)
2021年よりベトナム・ホーチミン在住。現地で貿易を行う商社と不動産販売会社を経営し、ベトナム人仲人と日本人仲人の2名体制で、日本人男性とベトナム人女性の国際結婚をサポートしている。
執筆協力:Pham Thi Thanh An(シニアカウンセラー)
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